異性の親友 | 過食嘔吐が治った**あなたは私の日向です**

異性の親友

私には

親友と呼べる男友達が数人いる。

みんなとっても大事な人だ。

中でも高校時代に出会った3人組(?)は

いろんな意味で私を支えてくれた。


彼らはもともと

私が高校一年生の時につきあっていて別れてもずっと好きだった人の部活仲間で、

同じクラスになったり、

彼女のことを相談にのったり、

ケンカをしたりしているうちに

それぞれがかけがえのない存在になっていった。

彼らは3人とも魅力的な男の子で、

それなりにモテていた。

ただ、私は他の人に夢中だったので、

彼らがどんなにイイ男でも、

恋愛対象として見たことがなかった。

逆にそのお陰で、

彼らにとって私は一緒に居て楽な女友達から

異性で一番の友達となっていったのだろう。


卒業後、3人はそれぞれ離れた大学へ進学してしまったので

年に数回しか会えなかったが、

手紙をくれたり、電話をくれたりして、

地元に帰った際には必ず会いにきてくれた。

彼らにとって私は、女ではなく、

弱音をはける大切な男友達の一人であったようだ。

(その中の二人は高校3年の秋に同時期に告白してきて、

私をひどく悩ませたこともあったというのに、

そんな気持ちもすっかり忘れているのか

全くもって失礼な話だ。(笑)そのうちの一人が今の彼ですが・・・)

そんな私たちだから、

もし、二人きりでお酒を飲んで酔っ払って一緒に寝ていても

間違いがおこらない自信があった。

もちろん実際に何度もそんな状況あったけど

間違いは起こっていない。


それぞれの生活はバラバラなので

一人ずつや、二人ずつで

遊びに来たり

相談にきたり

お酒を飲みに行ったりすることはあっても、

高校以来3人が揃って私に会いに来てくれることはなかった。

それがある時 何年ぶりかに3人揃ったのだ。


その頃既に過食嘔吐がひどくなっていた私は

その日の夜も早い時間から過食していた。

しかし見たいドラマがあって、

ドラマを見ながら過食して嘔吐したらすぐに寝られるようにと

一旦過食を中断してお風呂に入ったのだった。


お風呂に入っている時チャイムが鳴った。

男の子の声がする。

恐る恐る裸のままドアスコ-プをのぞいてみた。

奴らが3人で笑って立っている!!!

久々の再会だったのだが、あまりにも突然すぎて、

私はドアを開けずに

「いきなり何しにきたの!今お風呂に入ってるんだから入れてあげないよ!」と怒った。


「いやぁせっかく3人揃ったからさ、お前に会いに行こう!ってことになってさ」

「久々に4人で飲もうぜ」

( ̄ー ̄)v ( ̄ー ̄)v ( ̄ー ̄)v と3人。


私はさっきまで過食をしていたのだから

もちろん誰にも会いたくない。


「今誰にも会いたくない気分だから帰って!!」と私が怒ると、


しばらくだまる3人。


すると、


ガコン ガコン ガコン 


何かが落ちた音がした。


?と思っていると、


「大変だぁぁ~手が滑って携帯電話がお前の部屋のドアについてる郵便受けに落ちちゃったぁぁ~

この郵便受け内側からしか開かないんだよなぁ 困ったなぁ・・・」

「携帯電話がないと家に帰れないよぉぉ~」

郵便受けを開けてみた。


Σ( ̄ロ ̄lll) 

携帯電話が3台入っている。


「あんた達なんでそんなにバカなの!!!」

怒っていた私は3人のあまりのバカさにあきれてつい笑ってしまった。


「今お風呂からあがって片付けるから15分待ってて!!」


「えぇぇ~ 別にいまさらお前の風呂上り姿見たって興奮なんかしないよ~」

「うるさい!!!車で待ってなさい!!!」


「はぁ~い(^O^)/(^O^)/(^O^)/」


お風呂からあがり、食べかけのお菓子やパンやそこら辺にちらかっているものを

全部ゴミ袋に詰め、とりあえずクロ-ゼットに隠す。

髪が半乾きのままヤツらの待つ車へ向った。


「酒買いにいこう!!!」

お酒やつまみやお菓子を大量に買い込んだ。


実は3人のうち一人は今の彼氏で、

彼とは3人が来る数ヶ月前に、

私が「彼女に悪いからもう二人で会わない。連絡してこないで!!」と言ったきり

だったので、気まずいままだった。

でも他の二人は全く気づいていないようだったので

(気づかないふりをしていたのかも)

何とかごまかして明るく振舞っていた。

買い物している時、その彼と二人になったのでそっと聞いてみると、

彼も、私に会いに来るつもりは無かったらしいが、

「偶然3人が同じ日に帰ってきて、

連絡を取り合ったら、突然会いに行ってお前を驚かそうって話しになって、

断るのもおかしいと思ったから来た」

と言っていた。

それはもっともな理由だったので

私たちは自然にふるまうことにしたのだった。


あと10日ほどで彼らはそれぞれの道へ就職が決まっている。

今以上に離れ離れになって、4人で会うのはこれが最後かもしれない。

私は少し寂しくなったが、

今日を思いっきり楽しもうと思った。


私の家に帰り、お酒を飲みながらいろんな話をたくさんした。

ほとんどが高校の頃の思い出話だったけど、

本当に楽しかった。

何年ぶりかに

笑いすぎて泣いた。

声がかれるほど笑った。


過食嘔吐になった私は

笑い方を忘れてしまっていた。

私をそんなに知らない人からは、

いつも笑顔がよいと褒められた。

私の笑っている顔を見るとこっちまで楽しくなると・・・

私にはわからなかった。

楽しくなくても笑い、

心から笑ってない嘘笑いだと自分でも自覚していたのに、

それが良いと言われるとは。

そしていつのまにかそれが普通になってしまっていた。

しかし気づく人は気づく。

高校時代からの女の子の親友が言った。

「鮎ちゃん、心から笑ってない」と。

3人の男の親友達のうちの一人が以前遊びに来た時に言った。

「みんながつられてつい笑っちゃうような

お前のバカ笑いはどうした?」と。

もう一人が言った。

「無理して笑うな」と。

そして

「そんなお前 辛くて見ていられない」と。


それでも私に染み付いた嘘笑いは治らなかった。


だからこの日

3人は本当は私を心配してきてくれたのだ。

一人では無理だけど3人揃えば何とかなるかもしれないと

きっとそれぞれが思っていた。

事実

3人が無理矢理にでもおしかけて来てくれたお陰で

私は数年ぶりに自分の本当の笑顔を取り戻した。


リモコン付きのカメラで

4人の写真をたくさん撮った。

カメラを机の上に固定し、

忘れた頃に誰かがカメラのシャッタ-ボタンを押す。

そこには私たちの自然な姿が写った。


酔っ払ってイタズラ心がわいたのか、

私がトイレへ行っている隙に

誰かが勝手にタンスをあけて

ブラジャ-を取り出したようで、

私がトイレから戻った時には

3人それぞれが頭にブラジャ-をつけて

ポ-ズをとっていた。

(普段なら絶対そんなことしないヤツまで・・・)


私は怒ったけど、

怒りながら

やっぱり大笑いしてしまった。


笑ってばっかりの夜だった。


それから数日後、

3人はそれぞれ旅立った。

私は一人 家で泣いた。

それまでだって

しょっちゅう会えていたわけでもないのに

ものすごく寂しくなった。

大事なものが無くなってしまった気がして

抜け殻になった。


だけど出来上がってきた写真を見たら

元気がでてきた。

私はどれも大口をあけて

超ブサイクな顔で笑っている。

でもそれが嬉しかった。

本当に心から笑っている顔だと思った。

 私はその中の一枚を車に貼ることにした。

バカみたいに笑っている写真を見ると

元気が出てきた。

その写真を毎日の支えにした。


それからしばらくして

3人のうちの一人から電話がきた。

そして言った。

俺はね、

本当はお前のこと 女として全く意識してなかったわけじゃないんだよ。

女として好きか嫌いかと言われれば好きだしね。

ただ、お前といたら楽で、楽しくて、

お前がいるから俺達3人は集まるんだろうし

今のこの関係を壊したくないから

手を出せなかったんだと思う。

これはきっと俺だけじゃなくて

他の二人も同じ気持ちだったと思うよ。

まぁ一人は、今お前のこと本気で好きみたいだけどね。(笑)

でも俺も

正直お前に彼氏はできて欲しくないと思ってたよ。

お前の彼氏になりたいとは思わないけどね。(笑)


私はずっと、

彼らにとって私は、女であっても女ではなく、

弱みを見せられる男友達の一人でしかないんだと思っていた。

私が彼らのことを大事にしているだけかと思っていた。

私の中で彼らの存在が大きいのと同じくらい

彼らの中でも私の存在が大きく、大事にしてくれていたのだと実感できた。


3年後、

3人のうちの一人は私の彼となり、

その彼と私が暮らす家に

他の2人が遊びに来た。

3年ぶりに揃った私たちは

少し大人になっていたけれど、

気持ちは何も変わっておらず

やっぱり大笑いした。


そして2人はおととし結婚した。

私と彼は相変わらずで一緒に暮らしている。

私も彼も、年に数回それぞれと連絡はとっているが

あれから4人揃うことはない。


だけど私の中で

4人の関係はずっと変わらない。

たとえ彼が私の恋人になっても、

ほかの二人が結婚して、一番に守るべき大切なものができたとしても、

私たちは変わらずに親友だ。


今度4人が揃うのはいつになるだろう。

たとえ私がおばさんになって

彼らがおじさんになってしまっても

また相も変わらずに4人で笑いあえる日が来ると信じている。

私はそれを励みに

これからも歩いていく。